探究の丹求者

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***  日が暮れ、突然家の中が騒がしくなった。龍崎がリビングへ行くと、柿崎と榊原が帰って来ていた。何があったか、2人とも喜んでいる様だ。 「2人ともどうしたんだ」  突如として考えを打ち切らされた龍崎が不機嫌そうに聞くと、突然柿崎が飛びついた。 「翔ちゃんやったよ!」 「おっ…落ち着け」  普段は冷静な龍崎だが、柿崎に抱きつかれるとまでなると話は違うらしい。これまでずっと研究一筋だったからか、或いは単純にそういう事がなかったからか。 「見つけたんだよ、文献。 今の俺達に必要なやつをな!」  キスしかねない勢いで龍崎を抱きしめている柿崎に代わり、紙片を読んでいた榊原が答えた。榊原は顔を上げ、心底嬉しそうな顔をする。 「こいつは使えるぜ」  2人がそれを見つけた経緯はこうだ── 最初、散歩に出ていた柿崎はとある魔法に関する古文書を買おうとしていた。割に高価な本であった為、榊原の提案で榊原の実家の蔵へ探しに行く事にしたらしい。榊原の家の蔵には榊原家が先祖代々集めてきた様々な書物が大量にあるからだ。榊原の提案のまま蔵の中の蔵書を漁っていた時、偶然掘り出した文献がこれだという。  柿崎が事情を話し終わるまでの間、榊原は食事の用意をしていた。今夜は前日の夜から仕込んでいたビーフシチューだ。 「結局、欲しかった魔法書は見つからなかったけどね。 しかも髪が埃だらけになって大変だったんだから」  柿崎は座った途端夕食のビーフシチューを掻き込み始めた榊原を睨む。柿崎の文句と、それを適当にあしらう榊原とのやり取りがひとしきり行われ、龍崎も丁度文献に目を通し終わったところで柿崎と龍崎もビーフシチューに取り掛かる事にした。 「まぁ良いじゃないか。 これで石を完成できるしな」  パンを取りながら珍しく笑う龍崎を見て、最後の一口を食べようとした榊原の動きが止まる。ゆっくりとスプーンを置くと心配そうな顔をして、聞いた。 「龍崎、お前……何か悪いもんでも食ったのか?」 「驚くとこ違うわよ。 ねぇ翔ちゃん、本当に石完成するの?」  柿崎が呆れ声で素早く突っ込みを入れたが、龍崎は既にうわの空で何か呟きながらビーフシチューを食べていた。その視線は常に文献に向けられている。 「ああ、そうか……そうすればいいのか。 あ、あと魔石の比率変えないとないけないな。 新しい媒介も考えないと」
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