無死の夢視者

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***  2人は倒木の陰から《穴》がある場所を確認する。丘の手前からでは見えなかったが、《穴》の周囲50メートル程には柵が張ってあり、眠たそうに欠伸をする見張りが立っていた。その近くには煙突から煙を吐いている、丸太作りの小屋が3軒ある。  どうやら先程見えた煙はこれの様だ。 「やはり見張りがいるな」 エルが嬉しそうに言う。ヴァンは他に手がなく、しぶしぶと言った様子だ。 「どうせ他に隠れる場所も無いんです。 正面突破しましょう」 「そのつもりだぜッ!」  エルがそう叫ぶと2人は同時に駆け出し、一気に間を詰める。その瞬間、ぼんやりとしていた筈の見張りが急に大声を上げた。 『来たぞ、奴らだ!!』  それを合図に小屋から次々と人が出てくるのを見て、エルは思わず狼狽する。 「なっ……? どういう事だ!?」 「引き返しましょう!」  そう言うなり、ヴァンはエルの腕を掴んで引き返そうとしたが……できなかった。彼らの後ろには、武装した集団がいたのだ。  見覚えのある髭面の男が言う。 『よう、街の関所以来だな』 「……ッ!?」  ヴァンが驚き、動きが鈍った隙に一瞬にして囲まれ、2人はナイフを構える。髭面の男は、とうに失われた機器である筈の携帯電話を振りながら言った。 『こいつらに連絡したんだよ。 白黒の妙な二人組が街から《穴》に向かったってな』 『諦めて武器を捨てろ』 『さっさと投降しろ』  口々に諦めろ、投降しろ、と言われる中──  政府の人間で、腕が立つであろう者達が30人程。刀や剣を構えている彼らの中には、貴重な銃──正確には貴重なのは消耗品である弾だ……と、言うのも、必要が無くなった為にもはや製造されていないからだが──も持つ者が、髭面を含めて2、3人。  いくら腕に覚えがあるとは言えど、短刀を使う2人では勝ち目はない。ヴァンはそう判断したのだが──
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