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ピアノの音が遠くから流れてくるような気がして天井をぼんやりと見上げた 無機質でどこか冷たく世界と俺を隔てている 水槽のようだ 沈めるように体を抱いて目を閉じた たゆたう夢を見る 俺は金魚だった 掬い逃げ掬い上げられ飛び降りて 不協和音が鳴った 不意を突きつんざく音 癇癪を起こしたのか 音楽はもう流れてこない もう泳げない この部屋では二度と 溺れてしまう 溺れたくなる この部屋では ぽんぴんが鳴る もう俺は金魚じゃない ぽんぴんぽんぴん ビードロが張れる とけてしまえればよかった そうすれば割れて傷付けることなんかなかったのに
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