§記憶§

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  どの子供達も 一目で貧しいと分かる格好で 手には幾つもの果物を持ち ぼろぼろの靴や裸足。 必死に走る姿に通りの者達は 傍観を決め込んでしまう。 そんな中、一人の子供が 「わッ!!」 「へ?……うわッ!!」 一人の少年にぶつかり、 手にしていたリンゴを 落としてしまった。 「あ………」 「大丈夫?」 大人であれば片手で 簡単に握り潰せそうな 大きさしかない小さなリンゴ。 けれど、 落とした子供にとっては 大切な今日1日の唯一の食糧。 少年はそれを知っていた。 だから、 「はい、これ」 「え……?」 自分の持っていた紙袋から 大人の掌サイズのリンゴを 取り出し子供の両手に握らせる。  
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