§記憶§

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  「こっちは僕が貰うから、“交換”ね」 大きなリンゴを握らされ、 戸惑う子供に少年は 優しく微笑みかける。 「こうかん…?」 「うん、交換」 訊ねる子供に頷き、 少年が落ちていたリンゴを 拾い上げようとした時、 「盗ッ人のガキッ!!」 「ひッ!!」 リンゴを盗まれたであろう 店の主人が追い付き 子供の腕を捕まえた。 「今度と云う今度は逃がさねぇぞ」 「う…ぁ……」 小さな腕を店の主人である男の 大きな手が掴み挙げ、 脅え引き攣った 子供の嗚咽が上がる。 「役所に突き出してやる」 「や…ぁ……」 「待って!!その子、何も盗んでいません」 子供を連れて行こうとする男を 引き留める少年の声。  
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