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沖縄県那覇市
ヨハンリッター那覇支社
「了解しました・・・」
裕紀は受話器を置くと大きなため息をついた。
「どうかされました?」
琴音は裕紀にお茶を出しながら、訊いた。
裕紀:・・・厄介なのが、ベトナムから来る・・・
琴音:え?・・・
裕紀:元は東京の魔札使い集団の1人だったんだが、ヨハンリッター社の横浜支社に入社後、すぐにベトナム支社へ飛んだ人物だ
琴音:・・・出世コースにどストライクですね・・・
裕紀:まぁね・・・横浜支社に入社後、サポーターだったのにいきなり海外赴任。この会社でならば出世コースそのものだ
琴音:今でも、その人は、ベトナムのほうにいるんですか?・・・
裕紀:あぁ。それもベトナム陸軍に出向、特尉として任官している・・・そいつが、ベトナムで起きた事件に沖縄で関連する事があるとかで出張して来るんだ・・・
琴音にも資料が見えた。そこには出張してくる理由が書かれていた。
1つは魔札事件に関連したものであると書かれているのが分かったが、もう1枚資料があるものの、それは隠されてて見えなかった。
資料に目線を配っていると裕紀が話を続けた。
裕紀:厄介なのがベトナム陸軍に出向しているということだ。今朝の朝刊は読んだか?
琴音:あ・・・いえ・・・
裕紀:ここだ。ここにベトナム陸軍が日系企業を襲撃したと書かれている。表では日本大使館が事実確認に手間取ったとあるが・・・
琴音:え?表では?・・・
裕紀:本当は両国間の外務省とヨハン・リッター社の間で口裏を合わせているんだ
琴音:なるほど・・・
裕紀:襲撃を受けた企業は日本で魔札を流通させているルートに一枚絡んでいる可能性があったからね
琴音:でも、それがどうして厄介なんですか?
裕紀:派手にマスコミが騒いでいるところにそれに関わった人間が来るとなったら、世論が変わりかねない。我々の業務に支障をきたす
琴音:うわぁ・・・
琴音は事の重大さに気付き、那覇支社にかつてない危機が訪れていることを悟った。
「出張理由は・・・魔札事件の捜査か・・・」
裕紀は資料をもう一度見返し、ため息をついた。
朝刊には公示された県知事選挙に次いで、事件のことが書かれていた。
近隣の日系企業の中には沖縄の企業も含まれていたことから、軍事による制圧を厳しく非難していた。
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