プロローグ

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数日後。 「・・・なるほど。明へ向かう途中であったか」 松金は兵右衛門から座礁した船が明の南京へ行くための船だと知り、偵察のための船ではないことに安心した。 しかし、信用するきっかけが薩摩の内部事情―琉球侵攻が確実なものであるという情報を教えたことであった。 兵右衛門:薩摩は・・・10年前の関が原の戦いで疲弊し、再起を琉球王国の侵略に賭けているようです・・・ 松金:なるほど。薩摩は徳川から許可を得て、戦をしようという訳ですか・・・ 玄盛:宮古島の我々に出来ることはない・・・か・・・ 松金:しかし・・・なぜまた、明の、それも南京に行くおつもりでした? 兵右衛門:・・・フランスの船が種子島で頻繁に見かけるようになったからでございます。そして、そのフランスの船が探しているといわれているのが、魔札といわれるかるたのようなものらしいです 魔札という言葉に松金と玄盛は反応した。 ―まさか、薩摩もまだ見つけていない?・・・ ―フランスまでもが魔札を探している、だと?・・・ 2人は顔を見合わせた。 ということは、薩摩も魔札を狙っているのか、と疑ったが、次の兵右衛門の話でそれは晴れた。 兵右衛門:実は、薩摩のキリシタンは魔札を持ってます。なので、琉球の魔札を狙うことはありません 松金:なんということだ・・・ 兵右衛門:それに、魔札そのものは元々、大陸を渡って日本に伝わったもの。さらに一部のキリストの宣教師達が用いてたのです 玄盛:もしや・・・我々の探す魔札も、明を経由してきたもの、と考えるのが自然か・・・ 松金:だろうな 兵右衛門:これ以上、魔札が明から渡ってくると日本も琉球も滅んでしまいます。そこで、私は島津義弘公の命を受け、明へ渡る所でした 松金:そうであったか・・・ 3人が話している部屋に稲嶺が現れた。 松金は稲嶺を遣わせ、王府へ兵右衛門の処分をどうするか、尚寧王の返答を待っていたところだった。 稲嶺:王府から、薩摩へ送り返すようにとのお達しが出ました 松金:ご苦労であった 兵右衛門:薩摩に、帰る事が出来るんですね・・・ 玄盛:うむ。王府は薩摩へ帰しても差し支えない、と判断したのであろう 兵右衛門:・・・ありがとう・・・ございます・・・ 兵右衛門は涙を流し、琉球と薩摩の関係を改善することを決意した。
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