夜行少女とまくらがかりの僕

1-2 僕は桜を見たかった

｢……でも今年はこの『尾台堀公園』の花見がやらなかったのは残念でした｣

　朋奈が悲しそうに呟く。

｢あっ、うん。今年は震災の影響で自粛になったからね。そういえば今年はここの桜を見に来てなかったかも……｣

　准はあれだけ語っていた屋台の味ばかりを言って、桜のことはあまり感慨にふけることはなかった。

　たとえば自分が学校の入学式を迎えたときには、その時期の桜は特別に見えていたかもしれない。

　けど今年は、屋台もなく侘びしい雰囲気の為にここに足をわざわざ向けることがなかった。

　四季の風景の桜は今はもうなく散ってしまい、緑の葉をつけはじめている。