1-2 僕は桜を見たかった

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「見たかったな、桜」 「鈴倉君は今年は桜を見なかったの?」 「うん、見に来なかったんだ。久石さんと話してたら見逃したのを後悔してきたよ」 「そうですか。なら今度はあたしが桜がよく咲いた時に鈴倉君に教えます。一緒に見に行けば見逃すこともないでしょう」   「えっ?」  朋奈の自然なお誘いに准は驚く。  来年の春に自分達がどうなっているかわからないのに、今のこの場でそんな約束をしてくるなんて。 「……うん、ありがとう。桜がよく咲く頃に僕に教えてね」  そうして今だけは約束を交わすことにした。  顔が照れて気分が高揚としているのもわかっている。  准は食べ終わったおにぎりの包装紙をぐしゃっと潰していた。
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