――魔剣士奮闘記――

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晴れ空の下。 美しい景観が残る市街地。 通称、旧ブロア市街地。 旧がついているのは、もはや市街としての役割を放棄しているから。 ニュード研究施設【エイオース】。 その宙に浮かぶ研究施設が謎の爆発事故を起こした際に、この美しい街にはニュードが降り注いだ。 結果、土地は汚染されたうえ多くの人々が死に絶えた。 生き残った人々もこの土地で生活することは出来ず、わずか数週間という短期間でこの街から人は消えてしまった。 そんな今ではゴーストタウンとなったブロア市街の街道で、二機のブラスト・ランナーが対峙する。 ひとつは赤いカラーペイントの中量級ブラスト。 右手にはサブマシンガンを構えている。 もうひとつは青いカラ―ペイントの軽量級ブラスト。 不釣り合いなほど大きな片刃の大剣【ティアダウナー】を両手で握る。 「ここで会ったが百年目ー!!」 青いブラストに乗るボーダー、武井 タケルがコックピットの中で絶叫する。 そして、大きな体躯を誇るブラストが想像を超える速度で敵ブラストに駆けた。 その爆発的な速度は強襲兵装が標準で積んでいる武装【AC(アサルトチャージャー)】が生み出したもの。 「行くぜAC-マルチイェイ。見るがいい! 驚くほどヌルヌル動く!」 軽く∞を描く様に高速のフェイントをかけたのち、敵ブラストに接近する。 そして、そのままティアダウナーを左に構えて。 「オレが魔剣士だっ!!」 大きく回転するようにしてのフルスイング。 当たれば一発大破。もしくは、そこまでいかなくても致命傷となる大技。 なのだが……敵ブラストは冷静にバックステップとジャンプで大剣をかわした。 「なんだとー!!」 この回転しながらのフルスイングはソード系統武装の必殺技。 そして、必殺技は往々にして隙がでかいものである。 避けた敵は無防備なブラストに向けてマシンガンの銃口を合わせる。 そして、 「あばばばばばばばばば……」 1マガジンを撃ち切るほどの掃射。 その内数発はブラストの弱点たる頭部に命中。 偉い人いわく「軽量級は紙やで~」の言葉の通り、溶けるように耐久力は削れていって。 ――破壊されました♪―― 正面のモニターに腹が立つくらい可愛らしく宣言された。 「ちくしょう……ちくしょう……」 漂う怨嗟の声はただ虚しく。 そして、機体が大爆発を起こす前にオレの身体は脱出装置により空に放り出された。
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