-花園-

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 貴邑家は、明治時代まで貴族の中の伯爵地位を賜っていた。  貴族制度が無くなっても、先祖代々の資産と、祖父がやっていた仕事の功績がよく、今でも金持ちの部類に配属されるのだが、無駄に大きく広いだけの屋敷に、限られた使用人と祖母だけ。  今年になって馨が転がり込み、住居者が増えたと言ってもたったひとり。  三ヶ月と、まだ短い期間。  平日は学校への通学、土日は屋敷内を覚えるのに必死で、まだ屋敷の中全てを把握をしていないし、中庭には入らないこと――と、念を押されていた為に、屋敷の周り全ても把握をしていない。  とにかく、単身で探検しようものなら、迷子になるのは必須。  絶対に使っていない部屋の方が多い筈。  その使っていない部屋って、開かずの間とかありそうで、興味津々。   とは思っても、なかなか行動には移せないもので。  そんな中での、祖母からのお達し。  この暑い中、庭整備の手伝い。  それも、入るな――なんて言われていた、あの中庭。  面倒だけれど、興味はある。
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