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血に濡れた剣と甲冑の手入れをしていると、その日は終わった。
ローブは濃く染み付いていたので、もはや使い物にはならない。代えのローブがあったので問題はなかったが、その血のほとんどが自分のものではないことに寒気がした。
殺したのだ。僕は戦場でもないのに人を殺した。仕方がなかったといえばそれまでだが、やはりそう簡単なものではない。
あらかた血を拭き終わると、自らの怪我を手当てし始めた。
急所に当たらないように避ける技術があったおかげで、血の量の割には大した傷はなかった。
こんこんと控え目なドアを叩く音。どきりとして、救急箱を床に落としそうになった。
傷の手当ては終わった。しかし、こんな時間に客人というのも変である。
まさか、先ほどの鎧武者どもか?僕を本格的に殺しにきた。まさかという気持ちが強かったが、警戒することに異論はない。
しばらく様子を見ることにした。
こんこんと遠慮がちに叩いていたのが、最後にはハンマーで叩いているのではないかというほど剣呑な音を出すドアに、僕は確信した。
殺される。殺気は感じられないが、自然災害のように事故的に死ぬ。
ドガァンッ!!という派手な音を立てて扉の一部が欠損した。
「マリモいないのですか?私はリルカです。いるのでしたら返事をしてください」
扉の穴から声がした。それも見知った声。リルカ王女殿下だ。
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