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なぜ王女殿下が、という疑問もあったが、取り敢えず甲冑やローブ、剣を隠す。ばれれば明日の闘技大会に参加できない。
「お、王女殿下!?なぜ私のところに?」
扉がこれ以上破壊されないように開けると、その先にはハンマーを振り上げる王女殿下の姿が。
「あらいたんですか。いたのならば早く開けてください。危うく扉を木っ端みじんにするところでしたわ」
ハンマーを頭上に掲げたまま、貴婦人のように上品な笑い声をあげるリルカ王女。扉は無惨なもので、穴が空いていないところも凸凹に歪んでいた。
金髪碧眼の比類なき美女。それが戦場では戦乙女として畏れられるリルカ王女の容姿だった。
内心、溜め息を吐きながらリルカ王女を見ると、何かうずうずしている。
「ここで話すのも何ですから部屋に上がってください。何分汚い部屋ですが、どうか御容赦お願いします」
「…ふぅーん、なかなか掃除の行き届いている綺麗な部屋じゃない」
城に比べれば随分と狭い部屋だろう。だが、リルカ王女は文句も言わず、もの珍しそうに部屋を見ている。
「どうぞお座りください。紅茶を煎れてきますから」
「え、そんなに気を使わなくてもよろしいのに」
「ですが、王女殿下に無礼は働けません」
「良いのよ、マリモ。だって、今日は王女としてではなくリルカとして遊びにきたのだから」
「解りました。取り敢えず座ってください」
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