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夜が遅くなるまでにリルカ王女を帰さなくてはならない。
「リルカ様、そろそろ夜も更けて参りました。城で祝勝会もあるのでしょう?王女がいなければ、場もシラけてしまいますよ」
先ほどまで楽しそうに喋っていたリルカ王女が黙る。何か言いたげな顔をしていたが、喉元から先には出てこなかった。
「解りました。今日はありがとうマリモ。では私は帰らせていただきます」
悲しげな瞳。何か僕が失礼なことを言ったのだろうか。
扉を出る前に不意に振り返るリルカ王女。
「凄く楽しかったわ!じゃあね!!」
輝くような笑顔だった。
「あ、あのリルカ様ッ!!」
僕の声で立ち止まるリルカ王女。何で呼び止めたのか解らない。けれど、何か言わなければいけない気がしたのだ。
「また…、また来て下さいね!」
平凡な一言。呼び止めてまで言うことではない。
だが―――
「うん!ありがとうマリモッ!!」
とびっきりの笑顔に、僕は僅かにたじろいだ。宝石や太陽の輝きにも増すほどの比類なき笑顔。
そのままリルカ王女は、僕の視界から消え去った。
「………リルカ様」
僕がリルカ王女の笑顔に救われたように、僕もリルカ王女を救いたい。少しでも。僕にできることは、国の繁栄や安寧のために本物の英雄になることだ。
必ず闘技大会で優勝して、名実ともに英雄となってやる。
それが戦場で生きる希望をくださったリルカ王女への恩返しになるはずだ。
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