闘技大会予選

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 肌寒い早朝だったが、僕の胸の中では熱いものが滾っていたので、さして気にもならない。  闘技大会当日。甲冑とローブを纏った僕は、お世辞にも印象は良くない。まさに悪の化身のようで不気味であった。  しかし見た目は仕方がない。この甲冑も優勝した時にはとる。その時まで正常だったら良いのだが。  戦場でも使った剣を机の上に置き、僕は家から出た。  剣は支給される物を使わなくてはならない。不正をなくすためだ。  闘技大会の受付は、近くにある武器屋だ。ここらへんは祭のようなもので、一般人が多く戦いとも言えない。ただのちゃんばらごっこだ。 「…すまないが、闘技大会の登録をお願いしたい」  怪しそうに僕の全体を見回す店主。僕だって、こんな黒ずくめの甲冑を見れば呆然とするだろう。 「…まぁいいか。この紙に書きな」  登録用紙とペンを渡される。  名前はどうしようか?うむ、マリオでいいか。  性別や年齢は偽装する必要はないだろう。  何だ?優勝した時の願い?こんなものあったか? 「店主、これは何だ?」 「あぁ、それは終戦と100回を記念して王女殿下が特別に作られたものだ。優勝者の願いを一つ叶えるってな」  優勝者の願いか。なら、これしかあるまい。  英雄になる。  店主に渡すと、目が険しくなったが構うまい。 「確かに受け取った。予選第一回戦は隣にある空地でする。そこから好きな武器を持っていけ」  手に馴染んだロングソードを持ち、僕は隣の空地へと向かう。 「ちッ…本物の英雄かよ。邪神様に伝えないとな」  そんな店主の呟きに気づくことなく。
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