2604人が本棚に入れています
本棚に追加
肌寒い早朝だったが、僕の胸の中では熱いものが滾っていたので、さして気にもならない。
闘技大会当日。甲冑とローブを纏った僕は、お世辞にも印象は良くない。まさに悪の化身のようで不気味であった。
しかし見た目は仕方がない。この甲冑も優勝した時にはとる。その時まで正常だったら良いのだが。
戦場でも使った剣を机の上に置き、僕は家から出た。
剣は支給される物を使わなくてはならない。不正をなくすためだ。
闘技大会の受付は、近くにある武器屋だ。ここらへんは祭のようなもので、一般人が多く戦いとも言えない。ただのちゃんばらごっこだ。
「…すまないが、闘技大会の登録をお願いしたい」
怪しそうに僕の全体を見回す店主。僕だって、こんな黒ずくめの甲冑を見れば呆然とするだろう。
「…まぁいいか。この紙に書きな」
登録用紙とペンを渡される。
名前はどうしようか?うむ、マリオでいいか。
性別や年齢は偽装する必要はないだろう。
何だ?優勝した時の願い?こんなものあったか?
「店主、これは何だ?」
「あぁ、それは終戦と100回を記念して王女殿下が特別に作られたものだ。優勝者の願いを一つ叶えるってな」
優勝者の願いか。なら、これしかあるまい。
英雄になる。
店主に渡すと、目が険しくなったが構うまい。
「確かに受け取った。予選第一回戦は隣にある空地でする。そこから好きな武器を持っていけ」
手に馴染んだロングソードを持ち、僕は隣の空地へと向かう。
「ちッ…本物の英雄かよ。邪神様に伝えないとな」
そんな店主の呟きに気づくことなく。
最初のコメントを投稿しよう!