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「おいおい…」
闘技大会に出たことがなかったため、華やかなトーナメントととは違い予選がここまで酷いとは思いもしなかった。
酒を飲みながら予選が始まるのを待っている輩さえいた。
「今から第百回闘技大会を始める!対戦者を発表するので、相手を確認次第各々開始してくれ。ルールは、相手が降参するか、気絶するかまでだ」
繁雑とした空地で、これまた締まらない宣言とともに闘技大会は幕を開けた。
「あんたが、俺の相手かい?ふふ、怪我しねえうちに降参しろよ?」
何とも残念なことに、先ほどの酔っ払ったおっさんだ。口先の割に身体はやせ細り、明らかに鍛えていないことが解る。
「よろしくお願いします」
それが開始の言葉であったかのように、喚き声をあげながら猛進してくるおっさん。
遅いしキレがない動きに、若干溜め息をもらしそうになるが、どうにか押し止めて剣を一閃する。
踏み込みが少し甘かったが、どうやら急所に当たったらしく一撃でおっさんは気絶した。
審判もおらず、勝者は自ら唯一の審判である男の前に行き告げなければいけない。
「ああ解った。次はあの男と闘ってくれ」
返事も素っ気ない。トーナメント以外はただの祭のようなものだと聞いていたが、ようやく理由が解った。そもそも本気でトーナメントに出場しようという者がいないのだ。それに国の方も推薦枠で腕利きを得ているため、あまり熱心ではないみたいだ。
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