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次の男も大したことはなかった。ただの一般人が軍人に勝てというのも無理がある。そんなわけで僕は勝ち続けた。
いつの間にか空地には、僕ともう一人しかいなくなっていた。
「お兄さん、なかなかごっつい鎧着込んでるやん?そんなんで良く動けるね?」
もう一人の者、真っ赤な髪をした活発そうな美人が話しかけてきた。
「いや、見た目よりも随分と軽いんだ。…ところで、どこかで会ったことはないか?」
「ふふ、口説いてるん?じゃあ私は、違うところで戦わなあかんから!また会おうな!」
はぐらかされた気分だ。しかし、僕も南門近くの広場に行かなければならない。
大して疲れる要素もないつまらない試合ばかりだった。
しかし、重い甲冑で動き回るのはなかなかしんどい。
後、二時間で次の試合が始まる。ゆっくり歩いても間に合う距離だ。
馬でも借りようかと思ったが、この重装備では断られるだろう。鍛えてある軍馬でもない限り、この重量は無理だ。馬が潰れてしまう。
無言のまま歩く。奇異の視線を向けられるが、無視して南門へと急いだ。
しかし、僕は気がつく。お腹が減ってきたのだ。朝から何も食べていない。時間もあるし、どこかでご飯を食べていくか。
小さなテラスのあるレストランに入ると、すぐさま料理を頼んだ。
スパゲッティがくると、背後から見知った声が聞こえた。
「ねえねえ、リルカ様はお兄ちゃんをどうする気なのかな?」
「うーん?結婚するんじゃないかな?それよりも大丈夫なの?闘技大会に出場するんじゃなかったっけ、ネイルちゃん」
「あはは、ミオは何も知らないんだね。シードだから私は明日からなんだよ!」
「へえ、そうなんだ。私、闘技大会はトーナメントからしか見たことないや」
可愛らしい少女が二人で談笑していた。
どちらも見知った顔だ。ネイルは、リルカ王女が率いる戦乙女筆頭四騎士の一人で比類なき槍遣いだ。
もう一人の幼くも凛々しい顔つきをした少女は、リルカ王女の妹で、治療魔術を極めた司祭である。
どちらも僕とは何度か会っているので、顔を見せればばれるだろう。それにこんな重装備をしていることを突っ込まれると、ごまかせそうもなかった。
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