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「私は英雄なんかじゃないですよ。どうしようもないほど戦争に怯える弱兵です」
「知っているか?上の者に必要なのは強さでも賢さでもない。解るか?」
「私には関係のない話です」
「…怯えだよ。兵を指揮する者は勇敢でなければならないが、怯え、恐怖がなければ、それはただの猪だ。勝てたとしても、その者の近くには既に誰も立ってはいないだろう」
「その点、お主ならば怯えつつも勇敢に戦うことができると儂は思っとる」
「買い被り過ぎですよ。私はただの一等兵に過ぎません。それにもう軍が嫌になったんです」
「ふむ。だが、食い扶持がなくなるぞ。どうするんだ?」
「…どこかで教師にでもなりますから、もう私のことは放っておいて下さい!」
ばたんと閉まった扉の音が酷く耳に不快だった。
「解った。そのように王女様にも伝えよう。しかし、気が変わればいつでも言うのだぞ。儂は待っとるからな」
立ち去っていくカルマンの足音を聞いて、ようやく僕は一息ついた。
王女や将軍は、どうしてこんな僕に構うのだろうか。でも、二人には世話になったから無下にもできないし、国民には僕が英雄として認知されているらしいから、僕が軍を辞めると大変なことになるのかもしれない。
どうすれば良いのか解らない。
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