終戦

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 ただ運よく生き残り、敵国の王にとどめをさした。  敵国の王、エリオットは剛剣使いで有名な戦士でもあった。  僕が一太刀いれられたのもまぐれに過ぎない。  だが、敵国の王にとどめをさしたという事実は、この戦争を終わりに導いた英雄に繋がる。たとえ僕に英雄を名乗る実力がなかったとしてもだ。  王女や将軍が言うように、英雄であることを認めれば軍でもそれ相応の階級を与えられるだろう。  でも、それは国に、軍に縛られるということになるのではないか。  そんな自問が、僕の頭を延々と悩ませる。  戦いたくない。戦争が嫌だ。あわよくば隠居でもして、田舎で数人の子供相手に勉学を教えて、慎ましやかに生きたい。  でも、生き残った責任がある。運よく敵国の王を倒した責任がある。  戦争で死んでいった仲間たち。彼らの守りたかったものを守る責任が僕にあるんじゃないかと、思う。  それが生き残った僕の責任なのだ。  この国を守り、死んでいった仲間たちが守りたかった者たちを守る。そのためには、中身がともなっていなかろうと僕が英雄として、この国に居続ける必要があるのではないだろうか。  カルマン将軍だって、僕の中身には期待していないだろう。ただ国のために僕を英雄として奉ろうとしているだけなのだ。
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