2604人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、当然ながら問題もある。英雄として、僕の顔が国民に知られていることだ。
英雄扱いされたくはないし、えこ贔屓などされるのは以っての外である。
王女やカルマン将軍が知れば、シードくらいには押し込むだろうし、もしかすると八百長もありうる。
上位にランクインするのは、ほとんどが軍人なのだ。国の不利益になることをするはずがない。
「だったら変装するしかない」
そう呟くと、僕は何か顔を隠せるものはないかと部屋中を捜しはじめた。
「仮面、兜、ローブに甲冑か…、取り敢えず身につけると闘いにくそうだ」
戦争ではないのだ。純粋に剣術を競い合う闘いなのだから、動きが鈍る重い装備は得策じゃない。
もちろん殺しあうわけじゃない。剣だって刃引きしてある物しか使わない。
だが、変なプライドが僕に囁きかける。英雄として扱われたくない。一般人として参加して、優勝するからこそ意味があるのだ。
仮面はどうしても視野が狭くなるので除外して、黒い兜と黒いローブ、その下に甲冑を着込むという、まるで重歩兵のような恰好になった。
だが、仕方がない。この装備ならば、軍でも身につけたことがないものだからばれることはないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!