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「僕は、いつか君を殺す」
何度、そう言ったかしれなかった。
僕は、君を愛していた。君だけを愛していた。
狂っているのではないかと思えるほど、ただ君だけを見つめていた。
君しか愛せなかった。
世界には何人もの女がいるけれど、僕にとって女に見えたのは、君だけだった。君が、初めてだった。
のめり込むように僕は君を愛した。君も、僕を愛してくれていた。
その度に、僕は言った。
いつか、君を殺す。
ほとんど確信にも近いそれを言う度に、僕の中で何かが壊れていくのが分かった。君を愛しているという事実は、何一つ変わらないというのに。
それでも、君は変わらず僕の腕の中で笑っていた。変わらない笑顔を、僕に向けてくれていた。
そうして、僕が君を殺す、そう言う度に僅かに困ったような顔をして、それでも、貴方にならいいわと僕を許してくれた。
それを見る度に、僕はいつも泣きそうになったのを覚えている。
なぜ、こんなにも君は僕を真っ直ぐに見てくれるのだろう。名前を呼んでくれるのだろう。必要としてくれるのだろう。許してくれるのだろう。
君が僕を愛してくれたように、僕も君をとても愛していた。
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