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だから、嫌われるのが怖いと思った。君に嫌われたら生きていけないと思った。だから、君の言葉が嬉しかった。
君は言った。
僕の目を真っ直ぐに見て。それでも、どこか不安そうに僕に抱きつく腕に力を込めながら。
嫌いにならないで。私を置いて、どこかへ行ってしまわないで。そう言った。それから、いなくならないで、とも。
その声はまるで泣きそうに震えていて、でも、それがたまらなく愛しくて嬉しくて、僕は泣き出しそうだった。
抱き締める腕に力を込めて、僕は何度も頷いた。行かない。どこにも行かない。君を置いてどこにも行きはしない。
そう言うと、君は少し安堵したような、それでも悲しそうな表情を僕に見せた。それが、たまらなく苦しかった。
君は、こんなにも僕を必要としてくれる。僕を愛してくれる。僕が君を愛するように、君も僕を愛してくれていた。
だからこそ、僕は思った。
はっきりと明確に、それでも盲目的に。
いっそモヤのように漠然としていればよかったのかも知れない。そうすれば、きっと何かが変わっていたのかもしれない。
何も知らない、それしか理解出来ない子供のように、僕は呆然と考えた。
僕は、君を殺さなければならない。
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