短編集

享愛 -ｷｮｳｱｲ-

「僕は、いつか君を殺す」

　あなたは、私の顔を見るその度に、飽きることなく何度もそう言った。
　盲目的に、それでも真摯に何度も、まるでそれしか知らない子供みたいに。
　あなたがなぜ私を殺そうとするのかは、私には分からなかった。だって私はあなたを愛していたし、あなたも私を愛してくれていたから。
　浮気もしなかったし、あなた以外の誰かの話を、あなたの前でしたこともなかった。……以前に一度だけ、話はしたことがあったけれど、その時あなたは本当に泣き出してしまいそうな顔になったから。
　あなたが悲しむことは、したくなかった。なるべくあなたには笑っていてほしかった。
　でも、あなたは時々苦しそうに悲しそうに、表情を曇らせた。