7月-side B-

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手紙を書けるはずが無いのです。 文章を考える頭は埋めましたから。 手紙を書けるはずが無いのです。 文字を書く両手は埋めましたから。 会えるはずが無いのです。 歩くための両足は埋めましたから。 会えるはずが無いのです。 身体も全部埋めましたから。 では、どなたからの手紙? その方も彼と同じようにお別れしなきゃいけないのかしら? 様々な事を考えながら待ち合わせ場所に向かいました。 其所では7年前にお別れした彼がお待ちしておりました。 嬉しそうに、 哀しそうに、 楽しそうに、 寂しそうに、 私を待っているように見えました。 『久しぶりだね…』 7年ぶりの彼の声… ありえない… わからない… でも… 嬉しい… また… お別れできるんだ… その時、それまで聴こえていなかった蝉の声が、急に大きく響き出したように思えました。
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