第一章 呼び出し

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「…何、話って?」 教室の入り口まで行くと「ちょっと付いてきて」と言ったきり、中庭まで無言のままの彼女。 高校に入学してわずか2ヶ月だ。自宅から1時間半も離れたこの学校に、同中のやつが誰も入らないという理由だけでわざわざ受験したというのに…たったの2ヶ月…平穏な時は短かったな。 そんなことを考えながら空を見上げていると、突然彼女が振り返り俺の顔を見上げて言った。 「はじめまして、桜井悠人クン。私3組の池田小夏っていいますっ!」 「ど、どうもはじめまして…?」 今までにない元気な自己紹介に気圧されて、少し後退りながら答えた。 ……?何か様子がおかしい? 「…で、話って何?」 勢いがあったのは最初だけで、再び口ごもってしまった彼女…池田さんを促した。 「あ、ごめんね…時間かかって。こんなとこに呼び出したりしたら、用件なんてバレバレだよね?…でも何か本人目の前にしちゃうとやっぱりなかなか言葉が出なくって…」 …十分出てると思いますけど?俯いたまままくし立てる彼女を見ながらもどかしくなる。 「で?」
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