邂逅

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ガチャッ ドアに鍵をかけ、学校に向かう廉。 (親父……) 目を瞑ると蘇る朝の夢。 「学校……サボるか……」 家に引き返そうと俯いていた顔をあげると 「え……」 横断歩道の向こう側。人混みの中に見つけた懐かしい顔。 「親父…………?」 間違うはずがない、横断歩道の向こう側にいるのは廉の父、石神健太(けんた)だった。 廉の頬を涙が伝う。 信号が青に変わる。瞬間、廉は走り出していた。 「親父ぃぃ!!!」 周りの目を気にせず涙を流しながら全力で走る廉。 廉の声に振り向き、驚愕で目を見開く健太。 そして親子は対峙した。 「ハァッ!ハァッ!」 「廉……なのか?」 「親父……うっ、親父っ……」 「大きくなって……ぐっ!!」 廉は健太の頬を思い切り殴り飛ばす。 「今まで何処にいたんだよ?!?!勝手にどっか行っちまいやがって!!! どれだけ……どれだけ心配したか……」 「……すまない」 頭を下げる健太。泣きじゃくる廉。 「今日ここに、東京に来たのは廉、お前に会う為なんだ」 「……は?」 「とても大事な話だ。お前、学校は?」 「……大事な話なんだろ、今聞くよ」 「よし、じゃあなるべく人の居ない所に行こう。 こっちだ」 健太は廉の手を引き、路地裏へと入っていった。
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