覚醒

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ガラガラガラッ 廉が教室のドアを開けるともう昼休みが始まっていた。 「あ、石神君おはよう。 遅かったねどうしたの?」 昨日助けた二人の内の一人、堤香穂(かほ)が話しかけてくる。 「あ……うん、ちょっと寝坊……」 「そっか。 あのね、きょ、今日の放課後、時間ある?」 「?うん」 「よ、良かったら一緒に何処か行かない?昨日のお礼もしたいし……」 「……いいよ。行こっか」 「!ほんとに?!」 「うん。 今日ちょっと家にも帰りたくないし……」 キーンコーン…… 「……もう5時間目か」 「うん。じゃあ放課後、絶対だよ?」 「はは、わかったよ。さ、席着こうぜ」 「……だから、ここで因数定理が使える」 (ヤバいな……全く授業頭入らねぇ……) もうすぐ、5年前のワシントンの惨劇がまた起こる。 ポタッ 机の上に冷や汗が落ちる。 (ほんとに……もうすぐ東京が……) ポタッポタッ 汗は断続的に落ちてゆく。 キーンコーン…… 「ッ!ハァッ!ハァッ!」 授業終了のチャイムで我に返る廉。 「~~!くそっ」 廉は鞄の中に入っている注射器をずっと睨んでいた。
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