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「石神君?どうかした?」
終礼が終わっても青ざめた顔をしている廉に香穂が心配そうに話しかける。
「だ、大丈夫大丈夫。
さ、行こっか」
「!うん!」
二人が教室を出る。
誰が知っていただろうか。
この日この時から
廉の、いや東京の運命の歯車が狂い始めていた事を。
「で、何処行くの?」
「んとね、カラオケ行って、ゲーセンでしょ。
最後は……ここ!」
香穂が財布から二枚のチケットを取り出す。
「博物館?」
「そう。私のお母さんがね、商店街の福引で当てたの!なんかね~ティラノサウルスの本物の全身骨格とかがあるらしいよ!」
「おぉ、なんか見てみたくなってきたわ」
「でしょでしょ!でもまずはカラオケから!
早く行こっ!」
「はは、はいはい」
廉はこの時ばかりは父から聞いた事を忘れて、つかの間の幸せを楽しんでいた。
そう。
本当に幸せは
つかの間だった。
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