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「待ってろ堤……もう少し……もう少しだからな」
廉は香穂からMGMに視線を向ける。
「ウォォォォォッッ!!!」
突然雰囲気が変わった廉にMGMが威嚇する様に吠える。
「うるせぇぇえぇぇええぇぇっっ!!!」
MGMの遠吠えを掻き消す様に廉が叫び声をあげる。
「?!」
MGMが仰け反る。だが、その理由は廉の声量だけではない。
恐らく廉以外の人には見えただろう。
ぼんやりとしているようで、しかしはっきりと見えるもの。
廉の後ろにいる、ティラノサウルスが。
「ウォォォォォッ!!」
自身の恐怖を掻き消す様に廉に向かって走るMGM。
同時に廉も走り出す。
ティラノサウルスの脚力が今の廉には宿っている。ティラノサウルスの体重は5t。
それを支えていた脚力。
それが体重75kgの廉に宿っているのだ。
廉はもはや常人の目視では追えない速度で走る事ができた。
「?!」
突然廉が目の前に現れた様な錯覚に襲われたMGMに対処法は無かった。もちろん、自慢の鎌を構える事すらも。
「死にやが……れぇぇ!!」
廉がMGMの顔面にパンチを叩き込む。
MGMは倒れる事も、吹き飛ぶ事もなかった。
回転したのだ。
殴られたMGMは自身の頑丈さ故顔が千切れる事なく、その場で勢いよく回転し続けた。
回転がおさまり床へ落ちたMGMは当然の如く顔面が潰れ、絶命していた。
「ハァッ、ハァッ!」
廉は息を切らしてMGMを見下ろす。そしてすぐに香穂に走り寄り、抱きあげた。
廉が外に出ると、沢山の野次、記者、そして「ワイズマン」の鎮圧班が銃を構えて待っていた。
「?!人間?!
彼女を放して、両手をあげろ!」
銃を構えている班員の一人が叫ぶ。
「どいて下さい……」
「なんだと?!」
「お願いだから……」
「もう一度言うぞ!彼女を……」
「どけぇぇえぇぇえぇぇっっ!!!」
「「「?!」」」
静まり返る人々。彼らの横に抜け道を見つけた廉は、香穂を抱えたまま全力で走り抜けた。
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