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東京博物館に停車した一台の黒いリムジン。そこからフルバック フォワードが出てきた。
「社長!!」
「処理班か。ご苦労。
……状況は?」
「それが……
全く予想外の事態が起こりまして……」
「予想外?」
「現場を見た方が理解がお早いかと。
こちらです」
処理班の班員とフルバックは「KEEP OUT」
のテープをくぐり、館内に入った。
「これは……」
フルバックが見たもの。それはワシントン
で嫌という程見た、MGMの被害者の死体。
だが、そのMGMは床に転がって動かない。フルバックがMGMの亡骸に近寄る。
「……見事に顔面が潰されているな。人間のパンチじゃ、こうもいかない。
だがこれは……」
「ええ。MGMの顔面についているのは、見事なまでにくっきりとした、人の拳の跡です」
班員が苦笑いを浮かべる。
「そして……これを……」
班員がフルバックに一枚の写真を渡した。
「これは……?」
写真に映っていたもの。それは背の高い、だがまだ顔に幼さが残る日本人の少年と、彼に抱き抱えられた血まみれの少女。
「記者が撮った写真を現像化したものです。
恐らく、MGMを殺したのは彼かと……」
「なんだと?」
「彼はそこに映っている少女を抱えたまま……
走って逃げ出したんです」
「走って……だと?」
なまじ状況が状況なだけに班員が冗談を言っているのはあり得ない。フルバックは眼を見開いた。
「……それで今彼は?」
「班員達が追跡中です」
「そうか。
……彼は未登録のMGCの可能性が高い。連絡がはいり次第、逐一俺に伝えろ。それと、サザーランドを呼んでくれ」
「班長ですね、了解しました。では失礼します」
班員が博物館の外に向かう。
「……クソ。
嫌な胸騒ぎがするぜ。」
フルバックは苦い顔で崩れたティラノサウルスの骨に目をやり、館内の観察を始めた。
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