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「ハッ、ハァッ!」
夜の道路を廉が息を切らして駆けていた。
あまりの脚力で、廉が通った道のアスファルト舗装が剥がれてゆく。
すれ違う車を避けながら走っている為余計に体力を消耗する廉。彼が向かっている場所は都内の病院。以前ケンカをした時、バットで頭を殴打され気絶していた廉を休暇だったのにも関わらず廉を病院で搬送し、自身の手で手術してくれた女医が働く病院だ。彼女なら信頼できる。
「ハァッ、ハァッ!……もうすぐだ……ハァッ!
待ってろ、堤!」
廉は道路から歩道へ戻り、マンションの壁の前に立った。
「よし……」
廉はマンションの壁を思い切り足で踏みつけた。
ガッ
廉の足が壁にめり込む。
ガッ
さらに反対の足も。
ガッ、ガッ、ガッガッガッガッガッガッガッ
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ
廉は最初はゆっくり、しかし段々とスピードを早めこれを繰り返し、
マンションを駆け上がった。
「「「…………」」」
通行人が唖然として見守る中、廉はマンションの屋上へと登りきる。
「おぉおっっ!!」
そのマンションの隣の建物へと飛び移る廉。
建物から建物へと飛び移ってゆき、廉はあっという間に闇に消えた。
その頃、東京博物館では……
「社長!班長!」
「どうした?報告がはいったか?」
フルバックと話していた白人男性が顔をあげる。
大柄な白人の男で、身長はフルバックと変わらない位だ。坊主頭の頂点から、右目の下にまで続く大きな傷が威圧感を与える。
「ワイズマン」MGC事件処理班班長、マーリン サザーランド。彼も「ワシントン聖戦」経験者の一人で、フルバックとは共に背中を預けた間柄だ。
「いえ、一般人からの通報なのですが……
血まみれの少女を抱えた少年が、マンションを駆け上がり、建物を飛び移る姿を、目撃者したと……」
「……100%、MGMを殺った犯人と見ていいな、フォワード」
「あぁ。
報告ご苦労。
通報があった場所に車を出してくれ」
「はっ!」
班員が言った後、サザーランドが苦い顔をして呻く。
「嫌な感じだ。こりゃあまるで……」
「ワシントンの時みたいだ。お前も思うか、サザーランド」
「あぁ。
だが仮にそうだとしても、俺とお前、いや、東京に住む人達の5年を、ワシントンの時みたいに壊させねぇよ」
「当たり前だ」
フルバックはサザーランドと笑いあうと、外の車に乗り込んだ。
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