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(はぁ……もういい加減にこの空気はやめてもらいたいな……)
ケンカを始めたのは中学の時。それから時間が経つにつれ周りの態度も空気も変わってきた。
いやらしいものを見る目。
(まぁもう半ば諦めたけどな……)
廉は心の中で苦笑する。
「オイてめぇ!!!」
ドリンクバーの方で、男の怒号が飛んだ。一瞬で静まり返る店内。
(ナイス、皆の視線がそっちに向いたぜ。馬鹿が上手い事馬鹿やらかしたな)
「ご、ごめんなさい……」
(……あ?)
男が怒鳴りつけていたのは男ではなく、高校生位の二人の少女だった。
(しかもあいつらは……)
「コーヒーぶっかけやがって、火傷したじゃねえか!!しかも染みになるしよ!!!どうしてくれんだてめぇよぉ!!!」
「あ、あの……」
「あ、謝ってるじゃないですか……」
「あ?!謝りゃすむ問題じゃねーよ!!!」
(……情けない奴だな……
しかも誰も助けに入らねーの?
……しゃーないな……)
廉はゆっくりと立ち上がった。
「弁償しろよ、この服よ!!!」
「う、あ……あの」
「聞こえねーんだよ!!!」
「ひ、ひぐ……」
ガッ
男の肩を掴む手。
廉だ。
「ちょっとお兄さん、自分がチキンで男に怒鳴る勇気がないからって女の子に当たり散らすのはどうよ?」
「あ……」
「石神君!!」
廉を見て泣きそうな顔になる二人。
「あ?!?!
んだと、てめぇ!!!」
「しかもそいつ俺のクラスメートだからさ、ほっとけないでしょ……
あ、二人はもう帰る用意しな?」
「「え?」」
「いいからいいから。早く行きなよ」
「あ、ちょっと待てオイ!!!」
「あ、唾飛ばすなよー汚い、もうどっか行って」
「……てめ……ぇぐ?!?!」
ドガッ
男の鳩尾に廉の蹴りが入る。男は2m程吹き飛び、痛みと息苦しさで悶絶した。辺りが騒然となる。
「い、石神君……」
「あ、伝票頂戴。二人は出てていいよ、俺が払うから」
「え、そ、そんな事……」
「いいからホラ、早く行って」
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