邂逅

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夜になった。 「ただいま」 廉は玄関を開け中に入る。 「おかえり、ご飯あるからね」 「うん」 「……こんな時間まで何してたんだ」 椅子に座っている男が廉を睨めつける。 「お袋、いただきます」 構わずに席に着く廉。 「ちょっと廉……」 「何をしていたと聞いている!」 「……あ、これ美味い」 「廉、答えなさい!」 「あーはいはい、答えりゃいいんだろ? うるせぇんだよ、クソ野郎」 「な……!」 「廉っ!!」 「お前……誰に向かって口を……ガッ!!」 怒鳴る男に対して廉は空になった茶碗を思い切り投げつけた。 「きゃああああ!!!」 「誰に対して、だって?教えてやろうか?」 額から血を流す男に廉は青筋を浮かべながら近づき、胸ぐらを掴む。 「もう一回言ってみろよっ、なぁ!!オイ!!」 自分より小柄な男を殴り続ける廉。 「廉!やめて廉!お願い!」 母が泣いて廉にしがみつく。 「ハァッ!ハァッ!」 廉は倒れた男を睨みつけると自分の部屋へ上がっていった。 廉は自分の部屋に入ると壁を蹴りつける。 棚に大切そうに立てかけてある一つの写真立てが揺れた。 そこには廉、廉の母、そして廉が殴った男とは別の男が写っていた。 「親父……」 廉の父は、「ワシントン聖戦」が終結してから行方不明になっている。 そしてさっき廉が殴ったのは母が再婚した男だ。 「親父……何処で何してんだよ?」 廉はそう呟いてベッドに倒れこんだ。
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