プロローグ

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寂しかった。 両親の顔は見たことがない… 屋敷からも出る事は 許されなかった。 籠の中の鳥 みんなが僕をそう呼んでいた。 学校にも行けず 家庭教師と通信で学習をし 友達なんて1人もいない。 家の者も皆 僕を気味悪がって 食事を用意しては部屋を出て行き ベッドメイキングも 掃除も僕が居ないとき 居ないところで仕事を済ませ 誰の顔をわからない でも 1人だけ レンだけは一緒に居てくれた それだけで 十分だ。 部屋には少年が捲るページの 擦れる音だけが響いた。 「そしてお姫様は…」 「スー…スー…」 そっと少年がベットを覗き込むと 規則正しい寝息が聞こえてきた。 「おやすみなさいませ」 そっと少年は 寝ている子の額を撫で 分厚い本にしおりを挟み ゆっくりと表紙を閉じた。
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