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着いたのは、彩夏の兄が使っていた部屋だ。
家具のほとんどは引っ越す時に持っていってしまったが、ベッドだけは新しいのを買うと家に置いてきぼりたった。
暫く誰も入っていないせいで少し埃っぽい上に蒸している。
彩夏は窓を全開にすると、思いがけず涼しい風が吹き抜けた。
「寝る時は、此処を使ってください。ベッドよりも布団の方がいいですか?」
彩夏は何気無く聞いたのだが、2人ともベッドをポカーンと見つめているだけだ。
「あ……あの―?」
おずおずと聞くと、沖田も藤堂も彩夏を見た。
「これ、ベッドって言うものなんです。今は無いけど、この上に布団を敷いて寝るんですよ」
「「へぇ……」」
物珍しげにじろじろとベッドを睨む2人を、彩夏は可笑しそうに笑う。
「でもこれは1人用なんで、どちらかは床に布団を敷いて寝てもらいます。ちょっと待っててください」
彩夏は隣の部屋の押し入れから布団を一式引っ張り出すと、ベッドにセットした。
「取り敢えず、試しに寝てみてください。好き嫌いもあると思うんで」
彩夏が促すと、先ず最初に沖田がばふっと布団にダイブした。
大の字になった沖田は満足そうに笑って、よっと立ち上がった。
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