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携帯電話が急速に普及し、一人一台が当たり前になりつつある、そんな頃の話。
その日もいつものように、宇治ヶ屋探偵事務所は暇な時間が流れていた。
探偵事務所と聞けば、聞こえはいいが、ギリギリ田舎ではないくらいの街の、古いビルの一室。
事務所内も質素なもので、ありがちな事務机が二つに、電話が一つ。
所員も僕と、所長の二人のみの、小さな小さな事務所である。
所長と書かれたプレートを置いた机に、暇そうにうなだれている女性が一応僕の上司、宇治ヶ屋 暁子(ウジガヤ アキコ)だ。
二十代後半、所謂パンツスタイルのスーツ姿、肩口までの黒髪を括り、三白眼で吊り目がちな目に眼鏡が印象的な、一般的に見て美人に分類される女性である。
ただまぁ、この人も、この事務所も少々変わっているのだが、それは後々嫌でもわかるので、ここでは省略しておく。
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