1452人が本棚に入れています
本棚に追加
138 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/05(火) 05:58:15.98 ID:RffJ7xz2o
雨が降りだした。
冷たい雨が私たちの体温を容赦なく奪う。
勇者も戦士も魔法使いも、みんな白い顔をして震えている。
私も同じような顔をしているのだろう。
雨は止む気配すらない。
勇者が嫌な咳をしている。
勇者が高熱を出し、歩くことすらままならない。
馬車に寝かせてはいるが、碌な薬も無く、長時間の休養も出来ない。
悪化する一方だ。
雨はまだ振り続けている。
勇者の咳に赤いものが混じりだした。
移動魔法で戻る案も出たのだが、今の状態で使用すれば彼の命の危険すらある。
だが、このままでは死んでしまうだろう。
魔物が原因での死では無い場合、蘇生は不可能。次の街まで早くて三日。
決断を迫られる。
採取した魔物の体液を馬車に持っていった時、勇者は全て理解したようだった。
お願いだからそんな優しそうな目で私を見ないで。
毒を持つ体液を嚥下した後、血を吐いて動かなくなった彼を馬車に残し、私たちは進む。
雨音が私を責め続ける言葉のように聞こえた。
街はまだ見えない。
雨に氷が混ざってきている。
真っ白な雨が降り出した。
これが話しに聞く雪なのだろうか。
急激な冷え込みの為か、魔物の姿は少なく、動きも鈍い。
勇者がいないことを考慮し、出来る限り戦闘を避け、先を急ぐ。
最初のコメントを投稿しよう!