僧侶の手記

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164 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/07(木) 00:48:23.09 ID:uugOgiDlo 街に滞在中、英雄の国からの使いだという一団が現れた。 山賊か野党の集団にしか見えない姿に警戒するが、街の人達の対応を見るに、それなりに信用を置ける集団らしい。 どちらにせよ、相手の人数や場所を考えるに付いて行くしかないようだ。 いざという時の為、逃げる準備だけはしておこう。 意外なことに、彼らはとても紳士的だった。 更に場数を踏んでいるのか、魔物の対処も素早く、動作も洗練されている。 勇者と戦士は既に彼らに溶けこみ、酒を酌み交わしながら歌を歌い、そんな彼らを見て魔法使いが楽しそうに笑っている。 おとぎ話の中の冒険者の姿が、そこにはあったようにも思えた。 王の住む街までの旅路の中、彼らは多くのことを私たちに教えてくれた。 少人数での魔物の対処法や、有効な魔法の活用法であったり、果ては食用に適した魔物の種類であったり、調理法にまで及んだ。 そして彼らは口々に言う。 『我々は英雄などではない』 私たちと何ら変わりのない、悲しい人達がそこにはいた。 高い城壁のそびえる街。それが王の住む街。英雄の国。 幾度もの魔物の進行を耐えたのか、城壁は所々に傷を負いながらも頑丈に街を守っていた。 街へ入ると、老若男女様々な人がそこにはいた。 そして、誰もが私たちを歓迎してくれた。 旅の疲れもあるだろうと宿を紹介され、休んでいるとひっきりなしに誰かが顔を出しては長い旅を労ってくれる。 心地良い眠気が襲ってきた。もう遅い、今日は眠ろう。
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