『夏』

4/10
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「すごい?ちゃんと見つけられたで」 気付けばカズは私の元に無事帰還していた。 人混みから抜け出した戦利品は、少し濡れたビニール袋に入った缶チューハイ3本だった。 「お腹、空いてるのに」 「買えない、人多すぎ」 笑い合いながら、乾杯をする。 ***** カズの第一印象は、目がキラキラしてる、女の子のように可愛い男の子だった。 友達の後輩として紹介されたとき受けた衝撃は、今でも忘れられない。 11月、私が彼氏と別れたことを知ったカズからアドレスを聞かれた。 純粋に嬉しかった。 出かける計画を立てるだけでわくわくしたり、お互いの話をすることもすごく楽しくて、私たちの距離は急速に縮まった。 でも、カズと近付くたびに自分の傷が癒えてないことを知った。 ***** 空を見上げながら、隣にいるカズに触れてる左腕が熱を感じる。 当たり前の温もりに寄りそう。 優しくて、可愛くて、ちょっと情けないところもあるけど、すごく好き。 長い待ち時間を乗り越え、花火開始のアナウンスが流れ出したとき、改めて夏を感じた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!