徹夜

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智也は枕を掴み、雄太に投げ返す。 雄太はそれをキャッチし、抱き抱えた。 「何すんの。」 「貴様が生意気な口を叩いたからだ。 つまり、お前は好きでもない女を家に連れ込んだってことだ。」 「連れ込んでないだろ。」 「黙れ。 イケメンならともかく、泥みたいな顔した奴が! かわいい女の子を! 家にあげるだぁ!? しかも好きじゃない!? トイレを貸すから仕方なしに!?」 雄太は妙に力を入れて語りかけていた。 「泥ってなんだよ。 てか、なんでそんな兄貴がキレるんだよ。」 「だってずるいもん! 俺は女の子と全然絡めなかったのにお前がかわいい女の子と一緒にいるのがムカつくんだもん!」 雄太はベッドの上でじたばたし始めた。 智也はため息をついた。 「嫉妬かよ。」 「誰が泥顔野郎に嫉妬なんかするか。」 「だから泥じゃねって。 明日テストなんだよ俺。 もう出てってくれ。」 「俺だってかわいい女の子と遊びたい遊びたいー。 鈴本ちゃんと仲良くなりたいー。」 「鈴本ちゃんとか言うなよ馴れ馴れしいな。」 兄貴が鈴本ちゃんと言った瞬間に何故かイラッとした。 なんでだろうか。 「むっ!?」 雄太は跳ね起き、床に着地した。 「鈴本ちゃんのことが好きでもないくせに馴れ馴れしいだと? 生意気言うなぁぁぁぁ! そもそもお前だって鈴本ちゃんと仲良くねえだろ!」 雄太はベッドの上にある枕を掴み、大きく振りかぶって智也に投げつけた。 しかし智也はがっちりキャッチ。 「またやる気か! もう負けねえぞ!」 智也は勢いよく立ち上がり、身構えた。 テスト前日の夜は下らないケンカで更けていった。
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