徹夜

4/9
前へ
/106ページ
次へ
「ぐえっ。」 智也は兄、雄太のハイクオリティな攻撃を食らい、ベッドに倒れ込んだ。 「スタディに集中できねえだろうが!!」 雄太の口癖が炸裂した。 汚ならしい髭はいまだに剃っておらず、針ネズミのような髪も伸び放題である。 そして上下グレーのスウェットで現れたが、汗で所々湿っている きったねぇ。 「いてぇな… 今から勉強しようと思ってたんだよ。」 智也は弱々しく体を起こし、ベッドの上にあぐらをかいた。 「はい出たー。 出ました。勉強してない奴特有のセリフ。 勉強してる奴はそんなうんこ臭い言い訳はしないんだよ。」 「兄貴だっていつも言ってるじゃねえか!」 「いっ………言ってねえよ!」 「言ってるよ。 兄貴の場合は誰も何も聞いてないのに勝手に言い出すからな。」 「どういうことだ。」 「リビングで会うと「これから勉強しようかな」。 テレビ見てる兄貴と会ったら「これ見たら勉強頑張るか」 漫画読んでる兄貴と会ったら「これ読んだら勉強するかな」 全部そっちから勝手に言い出してるけど。」 「違う、違うぞ! それは息抜きだ。 浪人生は勉強という強大な存在に日夜脅かされているために、疲労が溜まるんだ。 いわば戦士の休息という…」「どこがだぁぁぁぁ!!!」 智也は雄太にジャンピングキックを捧げた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加