40章

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「やっぱり俺達は帰るよ」 蓮の一言によって安堵のため息を溢し、心の中で良かったと私は呟いた。 でもそれが不服なのかアリスの顔から笑顔がどんどん消えていくのがわかる。 私はアリスと目を合わないように顔を背けると、機嫌を損ねたアリスが私に声を掛けてきた。 「美優ちゃんは行きたいわよね」 さっき、柔らかく断ったつもりなのに強く出れない私を知って嫌みっぽく笑い掛けて言う。 「私は‥‥‥」 うまく断る言葉がすぐに出ず戸惑っていると、 「俺が行きたくないだけ」 ずっと蓮はアリスの味方でいたから‥‥‥ 私をかばってくれたことがとても嬉しい。 でも蓮の断りを無視するかのようにアリスは蓮の腕を揺らし、上目遣いで行こうと何度も誘う。 「ねぇ、蓮行きましょうよ」 蓮はまとわり付く手を払おうとしてもアリスの手は離れようとしない。 そんな二人のやり取りを目の前で見せつけられて私は黙っていることしかできなくて‥‥‥ 犇々と忍び寄るアリスの視線が肌を刺すかのような冷気を感じてしまう。 そこで一部始終見ていた桐谷課長が突然口を開いた。 「アリス。神堂を早く解放してやれ」 ムスッと口を尖らせたアリスは蓮の腕に力を入れ逃がさぬよう両手で押さえた。 「あら、海人だってまだ美優ちゃんにいてもらいたいんじゃない?」 喧嘩腰な態度でアリスは透かした顔で桐谷課長をあしらった。
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