9章

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いつもの資料室。 なんだけど……蓮が来ない。 ここは私と蓮の密会の場所として使わせてもらってるけど、いつもならすぐ来るのに今日は遅すぎる。 資料室に来る前、清水さんに私も行きますって、しつこいほど言われたけど、どうにか逃げ切ってきた。 「仕事入っちゃったかな」 ガチャ 「ごめん」 息を切らして蓮が勢いよくドア開け、いつものように鍵を掛けた。 「清水に捕まってた」 「あ、うん」 「充電させて」 ふわっと香水の香りとともに蓮が私を引き寄せ抱き締める。 「なんで俺に近寄るんだよ」 清水さんのことだよね。 「清水さん、蓮のこと気に入ってるみたい」 「俺は美優以外の女なんて興味ない」 胸がキュンってなってしまった。 そういう言葉で、不安や嫉妬が消されていく。 「やっぱり美優の匂いは落ち着く」 耳元で蓮がしゃべるからくすぐったい。 肩を押され、蓮から離れると、唇が重なる。 チュッ と、一度だけリップ音が鳴り、視線を絡めると吸い付くようなキスが降り注ぐ。 「ンッ」 静かすぎる資料室に水音が鳴り響き、蓮の舌が口内で私を攻め込む。 「ンンッ」 足に力が入らなくなり、自分を支えるのがやっとで、キスだけで意識が遠退いていく。 もうだめだ、と思ったら蓮が腰を押さえてくれて…… 唇がゆっくり離れていく。 やっと酸素を吸えた私は蓮の胸におでこを付け、荒くなった呼吸を整えた。 「今日泊まりに来る?」 火照った体が中途半端のままでいることをわかって誘ってるんだよね。 「うん」 「続きは夜ね」 ほらやっぱり。 軽いキスを交わし、スーパーの駐車場で待ち合わせの約束をして、蓮は資料室を出て行った。
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