9章

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ご飯を食べていても、お風呂上がりの後も、ぎこちない空気が流れていて蓮からも、そして私からも声を掛けることはなかった。 でもその空気を遮ったのは蓮で…… 「先に寝る」 「あ、私も」 目さえ合わしてくれない…… 「隣の部屋で寝るから」 いつも私達が寝ている寝室じゃなく、隣の部屋に蓮は入って行った。それをソファに座ったまま見ていることしかできず、何も言えなかった。 蓮は私を心配してくれているのに、私は清水さんのことを言えないでいる。 きっと言ってしまえば楽になる。でも蓮を想うと言えなくて…… 付き合ってから別々に寝ることなんてなかった。 ケンカだってしたことなかった。 どうしてこんな時にケンカになってしまうんだろう。 蓮がいなくなったリビングは静かすぎて、この世の中に私しか存在していないように思えてしまう。 蓮に拒絶されるって辛いんだね。いつも隣にいてくれる蓮がいないって切ないんだね。 私……こんなに蓮を好きになってたんだ。 「蓮……」 胸が苦しくて息を吸うのもやっとで。私は顔を手で覆って一人で泣いていた。 結局、一睡もできず夜が明けてしまった。 部屋の時計は5時10分。 蓮が起きる前にここを出ようと思い、急いで服に取り替えて、蓮に置き手紙を書いた。 蓮へ 仕事が残っているので先に会社に行きます。鍵はポストの中に入れておくね。 私はそっとドアを閉め、勝手に引き出しから取った鍵をドアのポストに落とした。 意を決意して、今日清水さんときちんと話し合おうと決めたんだ。
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