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「疲れたー。休憩しようよ」
「自分の荷物だろ」
今、私と蓮は引っ越しの荷造りをしている。
あの事件から一ヶ月。
お互いに仕事が忙しくてやっと引っ越しの準備をしているのだ。
忙しいせいもあってか、またしても私の部屋はぐちゃぐちゃで蓮に飽きられてしまった。
「もしかして引っ越して来たら俺が掃除担当?」
「掃除は私がするよ。大丈夫。それは私に任せて」
なんて胸を張ってみたけど……
「こんな汚い部屋で任せたら恐ろしいことになる」
そうだね。確かにそうだよね。
仕事が忙しくなるといつもこうなってしまうんだよね。一つのことに集中しちゃうと、他のことが見えなくなっちゃうみたい。
「やっぱり美優と一緒に住むのやめようかな」
え、やだ。だって梨花に言っちゃったし、うちの親にも一応伝えたし……
「やだよ……」
なんだか悲しくなってきた。すごく一緒に住むの楽しみだったんだもん。
「俺が誘ったのにやめるわけないだろ」
「うっ……」
「おいで」
フローリングに胡座をかいていた蓮に近寄ると手を引っ張られて、あっという間に蓮の膝の上に座らされていた。
「美優と一緒に住むの楽しみなんだけど」
蓮は穏やかな口調で目を細めた。
蓮も楽しみにしてるんだね。
「だって毎日美優を抱けるから」
またもこうしてさらっと言うから少し照れてしまって、私は視線を泳がせた。
「毎日は……その……体が……」
なんて言っていいのか仇ふたしていると
「毎日優しくするから大丈夫」
見る見るうちに自分の顔が赤くなっていくのがわかった。こんな甘々な言葉をもらってたら私の心臓破壊しちゃう。
でもそんな蓮が格好良いと思ってしまうんだ。
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