11章

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バスに乗ると幹事の人がにこやかにマイクを持ち、バスガイドみたいにあれこれ説明を始めた。 私は梨花と前の方に座り、蓮は後ろの方に座っていた。 バスに乗る前、蓮とすれ違ったけど目を合わせることもしゃべることもなく、蓮はバスに乗ってしまった。 会社でもいつもこんな感じだけど、さっきのことがあってか、しゃべれないというのはやっぱり寂しい。 そう思っているのは私だけなのかな…… 周りを見るふりをして後ろを見ると、通路を挟んだ女の子達に声を掛けられていた。 女の子と仲良くしている姿なんか見たくない。そう思った私はすぐに前を向き視線を落とした。 普段からモテるのはわかってる。でもいつも蓮からあまり笑い掛けたりしない。 それなのに今の蓮は笑顔を見せて女の子達としゃべっていて、その女の子達が頬を赤くしていた。 不安な気持ちで胸がチクチク痛い。他の女の子達と仲良くしないで、と醜い自分が嫉妬している。 梨花がこの社員旅行でたくさんカップルができるって入社した時言ってたことを思い出した。 私達のことは誰も知らないから…… 蓮を狙っている女の子がいるのかもしれない。 そう考えば考えるほど不安が押し寄せて、バレてしまった方が……とさっきの蓮の言葉が頭を過った。 ううん、だめだ。バカなことを考えた私は頭から消すため梨花に話し掛けた。 「早く温泉入りたいね」 ミルクティーの入ったペットボトルを開けながら隣に座る梨花に声を掛けると、聞きたくない後ろの女の子達の声が耳に入ってきた。 「神堂部長彼女いるんですか?」 私は気持ちが落ち着かず耳を塞ぎたくなった。
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