11章

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またね、と手を振り高杉くんと別れると梨花が 「いい男になったね、高杉くん」 「うん。なんか入社した時と雰囲気変わったかも」 「男は仕事が順調だと中身も変わるのよ」 「そうなのかな」 さっきの高杉くんを見ると自信に満ちた顔付きだった。同じ日に入社した同期が逞しくなっていくのは私も嬉しい。 きっと高杉くんはこれから役職がついて上へ上がっていく人材なんだろうなって思っていた。 「うわっ凄い人」 宴会場の大広間に来るとうちの会社の人達がすでに集まっていて、どこに誰がいるのかなんてまったくわからない状態。 取りあえず空いてる席に座ろう。 梨花の後を着いていきながら蓮を探す。 蓮どこだろう…… とにかく人が多い。しかもほとんどの人がお風呂上がりで浴衣を着ているためみんな同じ格好。 「美優ここでいい?」 「あ、うん」 梨花が空席を見つけそこに座ると私の視界に蓮が映った。 人と人の隙間から遠くに蓮が見える。 あ…… 顔を上げた蓮と一瞬目が合ったのに…… すぐ目を逸らされた。 蓮…… 近くにいても近付けない。隣に座りたいのに座れない。 嫉妬や不満が頭の中で渦を巻く。そんな自分が嫌でたまらない。 早く社員旅行が終わってほしい。そして帰ったら蓮にギュッと抱き締めてもらいたい。
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