11章

7/19
前へ
/549ページ
次へ
「ここ座ってもいい?」 「あ、はい。どうぞ」 と足元から上へ視線をずらすと 「あ、高杉くん」 高杉くんが立っていて、私の隣に腰を降ろして座った。 「ここしか空いてなくて」 「あ、うん」 「美優の隣だから来たんでしょ?」 いやいや、梨花それはないと思うよ。ほんとに梨花はとんでもないことを言うんだから。 「はあ?たまたまここしか空いてなかったんだよ」 高杉くんは少し慌てた様子で持ってきた煙草に火を付けた。 「高杉くんって煙草吸うんだね」 首を傾けて高杉くんを覗くと 「あれ?高杉くん少し顔赤いよ。熱あるんじゃ」 「ふ、ふ、風呂上がりだから暑いんだよ」 「ほんとに大丈夫?」 「ほら井上。飲めよ」 と言ってビールを注いでくれた。 あれ?高杉くんってこんな感じだった?あたふたする人だった? 「ありがと。こうやって飲むのも久しぶりだね。会社に入った頃はよく飲みに行ったよね」 「みんな忙しくなって集まることなくなったよな」 月一回はグループだった4人で朝まで飲んでいた。いつも仕事の愚痴ばかりだったけどね。 「あれ?時田くんは?」 「あいつ急な出張入って、昨日から九州」 時田くんも同期で私達4人の仲間。時田くんこそほんとにずっと会っていない。 「そっか残念だね」 「仕事どう?」 「うーん。それなりに頑張ってるよ」 「お前の上司って女達がいつも騒いでる神堂部長だろ?」 蓮の名前が出てきてドキッとしてしまった。驚いたことを誤魔化すようにお膳の上からグラスを取りビールを飲み込んだ。 高杉くんも蓮の人気を知ってるんだ…… ふと蓮が気になってちらっと見ると…… 私は動けなくなっていた。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加