11章

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あの男は確か営業課の高杉。美優の同期のはず。 あいつを女達が囲んでいるのを何度か見たことがある。 男の俺から見ても確かに整った顔で女が騒ぐのもわかるような気がする。 さっきバスを降りてから美優を見たら、鈴木と楽しそうにしゃべっていた。車の中でいじめたから落ち込んでるんじゃないかと思っていたら…… そうでもなさそうで。せっかく気にするように仕向けたのに。気にして近付いてくることを楽しみにしていた俺はため息をついた。 ロビーで俺に向けるような笑顔で高杉と笑いながら美優がしゃべっている。 そんなに親しい仲なのか? 俺の中で高杉に危険警告が鳴り響いた。あいつは美優に気がある。 俺と同じ目で美優を見ている。 たぶん鈍感な美優がそんなこと気付くはずがない。 「神堂部長」 なぜかさっきから三浦瑞穂が俺の傍から離れず、くだらない話をしてくる。無視することもできない俺は適当に返事をしていた。 今はそんなことより美優のことが心配だ。 隙を見せたら高杉が入り込む。 どうしたらいいのかと考えていた。 でも予感は的中。宴会場で高杉は美優の横に座っていた。
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