11章

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「もう忘れてやるー」 「おい井上、お前大丈夫かよ」 体が火照りすぎて熱い。しかもフワフワしていて目が回る。 蓮が三浦さんとイチャイチャしてて私のことなんて見てくれない。 朝、車でバレないようにって言ったよ。でもだからって三浦さんと一緒にいるなんてさ。 どうせ私なんて大人の色気はないし、子供みたいだし、すぐ泣くし…… そう考えると自分の良い所なんてない。 だからって二人で楽しそうにするなんて…… 「グスン」 「今度は泣くのかよ」 「もおやだぁ」 頭の中が蓮でいっぱいで、こんなに大好きなのにどうすることもできなくて、私は泣いてしまっていた。 「外行って酔い醒ましてこよう」 高杉くんに腕を掴まれて、立たされると 「うわっ」 足がふらつきバランスを崩してしまい、高杉くんが腰に手を伸ばして支えてくれたけど、勢いのあまり胸に飛び込んでいた。 「ごめんねぇ。フラフラしてだめだぁ」 恥ずかしくて急いで離れたけど、またすぐに腰にあった腕に力が込められた。 「飲みすぎなんだよ」 「だってぇ」 「ほら、ちゃんと立てって」 瞼はすでに重たくて、きっとベットに入ればすぐ眠れてしまう。隣にいるのが蓮だったらいいのに。 旅館の中庭にあるベンチに座らされた私は酔いのせいで体が左右に揺れて、自分の意思などもうなくって高杉くんの肩に頭を乗せていた。 きっと高杉くんと蓮が重なっていたのかもしれない。 「お前って酒弱いくせに飲むよな」 「う……ん」 「なあ?」 「う……ん」 夢心地の私は目を瞑ったままで、虫の鳴き声と夜風が更に睡魔を誘い、いつの間にか隣にいるのは蓮だと思い込んでいた。 「蓮……」 「蓮?蓮って誰?お前、男いるの?」 スースーと気持ち良く寝息を立てていた私に高杉くんが話掛けたけど応答がない。 「ったくその寝顔ヤバイだろ」
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